小さな未来
普段から西表島での取材を元に生き物の絵を描いています。未来を絵にするにあたっても基本的なスタンスは変わりません。島の生き物全てを含めての自然環境や人との関わり方についてより良い方向へ向かっていってほしいと思っています。
その全てを描くことは出来ませんが、イリオモテヤマネコは一つのシンボルとして大切です。
彼らが持つ野生の魅力は私たちを惹きつけます。彼らの日常に当たり前にある、それでいて私たちには見せてはくれない一面を絵にしていこうと考えました。
私たちが島の環境との関わり方を損なえば彼らの日常は簡単に無くなってしまいます。これから先、長い時間が経った時に私の描く絵が私たちにどのように見えるのかを考えます。ただの何のことない動物画だと思われるのであればある意味良いことなのかもしれません。かつて存在した幻の生物として扱われ、私の描く絵にすら何か特別な意味を感じ取らざるを得ない未来が来てしまうよりもずっと良いです。
そんな事を考えてモチーフにヤマネコの親子を選びました。
私の拙い考えですが、今すぐに答えの出ない問題に対して私たちに出来ることといえば、同じ思いを持つ仲間と繋がることだと思います。
何をどう課題として捉えるか、人によって異なるでしょう。せめて同じ感動を持って同じ未来の方向を見ることが出来ればよいです。その仲間により小さな命も加えていけるようにと思いを込めて描きました。
技法としては絹に墨と岩絵具に金泥で描いています。
支持体の特性上、一度入れた仕事は消すことが出来ないので、一つ一つ丁寧に触れていく事を大切にしています。